2008年03月09日

第5章: 生活環境

この章の翻訳を担当したのは、ほりべさん、cyber-starさんです。

[5-1]-[5-33]
Science For All Americans翻訳プロジェクト: Chapter 5: THE LIVING ENVIRONMENT
 
 

第5章:生活環境

生命の多様性

遺伝

細胞

生物の相互依存

物質とエネルギーの流れ

生命の進化


Chapter 5: THE LIVING ENVIRONMENT

[5-1]

人々は長い間生物に対し興味を抱き続けてきた。例えば、どれほどの種が存在するのか、それらの種はどのような種であるのか、どこに住んでいるのか、お互いどのように関わり合っているのか、そして、どのように振る舞うのか、などである。科学者達はこれらの問いや、地球に住む他の生物に関するその他の疑問に対する答えを探し求めている。特に、科学者達は、人々が生活環境をよりよくするにはどうしたらよいのかを理解するための概念や原理、理論を構築している。

[5-2]

生物は他の物質とまったく同様の構成要素から作られ、他の物質と同様ののエネルギー転換と関わり、基本的な力を利用して移動する。したがって、4章"The Physical Setting"で論じた物理原則を、星や雨滴やテレビと同じように、生物に対して適用できる。しかし、生物は他の原理の適用することでもっともよく理解することができるような特徴もまた持っている。

[5-3]

本章は、どのように生物が機能しているか、生物たちが他の生物や環境とどのように相互作用しているかに関する基礎的な知識に関する提言を行う。本章では、6つの主要なテーマに焦点を当てる。それは、地球生物の生物的な特徴に反映される生物の多様性、ある世代から次の世代に対して受け継がれる特徴の伝達、生物を構成する基本的な要素である細胞の構造と機能、すべての生物同士と環境との相互依存性、大規模な生命の循環を通じた物質とエネルギーの流れ、そして生物の類似性や多様性を進化がどのように説明するか、である。

 

[5-4]

生命の多様性

いつの時代も、何百万もの異なる種類の地球に棲む生物個体が存在する。ある生物は他の生物に似ており、またある生物は他の生物とかなり異なっている。生物学者は、それら生物の構造や行動の類似と相違点に基づき、集団とその下位集団からなる階層構造へと分類している。もっとも一般的な生物の分類の一例は太陽から直接エネルギーを受け取る植物と、植物により合成されたエネルギーに富む食物を消費する動物という分類である。しかし、すべての生物がどちらか一方に明確に区別されるわけではない。例えば、核をもたない単細胞生物(バクテリア)という、植物や動物とは違った集団に分類される生物がいる。

[5-5]

食物の生産や探索、食物からのエネルギーや物質の獲得、新しい物質の合成や繁殖といった基本的な作業を行う内部機構の構造と配列が大きく異なることから、動物や植物は非常に多様な体の設計をしている。科学者が生物を分類する際、それらの細かな解剖学的構造に頼る方が行動や見た目に頼るよりも妥当であると考えている。例えば、乳腺や脳の構造といった特徴からクジラとコウモリの方が、クジラと魚、コウモリと鳥といったペアに比べ、より近い関係にあるとされる。また類似性の尺度を変えると、犬は、背骨を持つために魚と、体毛も持つために牛と、肉食であるために猫と同じ分類とされる。

[5-6]

有性生殖を行う生物では、交配することで稔性を持つ子孫を残すことができるすべての生物が同種に分類される。しかしながら、種の定義は厳密なものではない。例えば、境界において、ある特定の生物を正確に分類することが難しいことがある。実際問題、分類システムというのは自然の一部ではない。むしろ、分類システムというのは、生物学者にによって作られた枠組みであり、生物間の関係性を暗示するものであり、研究課題を形作っているものなのである。

[5-7]

地球上の生命の多様性は、生物の解剖学上・行動学上の異同の研究からだけではなく、分子にみられる異同の研究からもまたはっきりと理解できる。生体内で作られる最も複雑な分子は小さな分子の鎖である。すべての生物において様々な種類の小さな分子はほとんど同じであるが、非常に複雑な分子を構成する構成要素の特定の配列こそ、その種の特徴となっている。例えば、DNA分子は4種類の小さな分子が繋がっている長い鎖であり、その精密な配列が遺伝情報をコードしている。生物間の近い・遠いといった関係は、それらのDNA配列の類似の程度から推測可能である。分子構造の類似度から推測された生物の関係は、解剖学的な類似性にもとづく分類とかなり一致している。

[5-8]

種の多様性を維持することは人類にとって重要である。私たちは、生活する上で必要なエネルギーと物質と得るために二つの食物網に依存している。ひとつは、小さな海洋植物と海草から始まり、それらを食べる動物、さらにそれらを食べる動物を含む。もうひとつは、陸上植物から始まり、それらを食べる動物、などなどを含む。複雑な種間の相互依存は食物網の安定化に役立っている。ある場所での小さな攪乱は徐々に系を修復するような変化を導くことが多い。しかし、生存している個体群や環境に対する大きな攪乱は食物網に不可逆な変化をもたらすことがある。多様性を維持することは、変化した環境に適合した特徴を持つであろう変種が見いだされる可能性を増加させる。

[5-9]

遺伝

とてもなじみのある観察の一例として、子がその両親と非常に似ていながらもいくらかの変異をみせることが挙げられる。すなわち、子は両親や子同士と互いにいくらか異なるということだ。何世代も経ると。これらの変異は蓄積されることがあり、生物は遠い祖先から外見や行動が大きく異なってくる可能性がある。例えば、人は家畜や植物を、望ましい特徴を選抜することで品種改良してきた。その結果は、現代みられる多様なイヌ、ネコ、ウシ、ニワトリ、果物や穀物であり、それらは目で見て分かるほどに祖先とは異なっている。変化はまた、例えば穀物において、新しい種を作るのに十分なほど大きなものとして観察される。実際、共通の祖先種から分岐したある子孫同士には、もはやお互いに交配できなほどに異なっているものがある。

[5-10]

発達の指令は、両親から子供へ、DNA分子の一部分として知られる何千もの別個の遺伝子を通して伝えられる。無性生殖を行う生物の子孫(クローン)は、親の遺伝子をすべて引き継ぐ。有性生殖を行う植物や動物では、雌からの特別な細胞が、雄からの特別な細胞と融合する。こららの生殖細胞の各々は、親の遺伝情報の任意の半分を含んでいる。ある雄の生殖細胞と雌の生殖細胞が授精の過程で融合するとき、それらは、それぞれの親由来の半分の遺伝情報が組み合わさることで、対になった遺伝情報からなる完全な一組の情報を備えた細胞を形成する。胚、そして徐々に種子や成熟した個体を形成するために受精卵が分裂するに従い、さきほどの組み合わさった一組の情報は、新しい細胞のそれぞれの中で複製される。

[5-11]

有性生殖での遺伝子の選択と組み合わせの結果、二人の両親から非常に多様な遺伝子の組み合わせの子をもたらす。別個の生殖細胞に分配される遺伝子の半分には何百万もの異なる可能な組み合わせがある。また、雌雄の生殖細胞同士にもまた何百万もの可能な組み合わせがある。

[5-12]

しかしながら、遺伝子の新たな混合だけが生物の特徴に見られる変異の唯一の原因ではない。何世代にもわたって遺伝的な指令が見かけ上変化せずに伝えられているようであっても、時として細胞のDNAの中にある情報のいくらかは改竄させられる。DNA断片の欠損、挿入あるいは置換が複製の際のランダムなエラーを通じて自然に起こるだろうし、化学物質や放射線によっても引き起こされるだろう。もし変異した遺伝子が生物の生殖細胞の中にあったら、そのコピーが子へと伝えられ、変異はその子のすべての細胞の一部となり、その子に新しい、あるいは変化した特徴をもたらすだろう。これらの変化した特徴のうちのいくらかはその生物が生存したり繁殖したりする能力を向上させるかも知れないし、その能力を低下させるかも知れないし、とくに影響はないかも知れない。

[5-13]

細胞

全ての自己複製する生物は、単細胞生物から象に至るまで、彼ら自身の数兆個に及ぶ細胞で構成されている。例えば鳥の卵細胞の様ないくつかの大型の細胞は肉眼でも観察することが可能だが、ほとんどの細胞は顕微鏡でないと観察ができない。蛋白質合成、栄養源からのエネルギーの抽出、複製などの生物としてのほとんどの基本的な機能がこの小さな細胞のレベルで行われている。

[5-14]

全ての細胞は、これらの基本的な生命活動に関わる同様なタイプの複雑な分子機構を有している。 これらの分子機構は、物質の出入りを制御する膜に囲まれたおよそ2/3が水でできているスープの中で相互作用をしている。 より複雑な細胞では、いくつかの共通のタイプの分子がより効率的に同じ基本的な生物機能を行う構造に組織化されている。 特に核はDNAを封入し、蛋白質による骨格で核内で行われる操作の組織化を補助する構造である。 さらに全ての細胞に共通の基本的な細胞機能に加えて、ほとんどの細胞は多細胞構造を取ることで他にはない特殊な機能を発揮している。 例えば腺細胞はホルモンを分泌し、筋細胞は収縮することができ、神経細胞は電気信号を流している。

[5-15]

細胞分子は少ない数の要素の原子で構成されてる。主に炭素、水素、窒素、酸素、リン、硫黄である。炭素原子は、大きさが小さいことと4つの結合可能な電子を持つことで、他の炭素原子と鎖状または環状に連結され大きく複雑な分子を形成することができる。細胞内で行われるほとんどの分子間相互作用は水中で行われ、かなり狭い範囲の温度とpHを要求する。低い温度では反応は著しく遅くなり、一方で高温や極端な酸性下では蛋白質分子に不可逆的な傷害を受けることがある。pHの小さな変化でさえ、分子そのものや分子間の相互作用の方式を変化させてしまう。単細胞も多細胞構造も、細胞のpHを適切な範囲に保つための分子機構を備えている。

[5-16]

細胞の働きは多数の異なるタイプの分子、主に蛋白質が集合して行っている。蛋白質の分子は20種類のアミノ酸からなり、長く、そしてそのほとんどは折りたたまれた鎖状である。蛋白質の機能はその特異的なアミノ酸の配列に依存し、鎖の形は鎖の一部分同士の相互作用の結果として構築される。ある構築された分子は遺伝情報の複製や細胞構造の修復を補助し、またある分子は細胞の内外を出入りし、そして分子間の反応を触媒したり制御したりする。特殊化した細胞では、ある蛋白質分子が酸素を運搬するだろうし、収縮効果を持ったり外部の刺激に反応したりするし、また、髪や爪などの身体構造の部品を供給したりする。さらに他のある細胞ではホルモンや抗体、消化酵素として働く分子が排出される。

[5-17]

DNAによってコード(暗号)化された遺伝情報は、蛋白質を構築するための指令を出す。そのコードは実質的に全ての生物に共通のものである。従って、例えばヒトの細胞から遺伝子を取り出してバクテリアに移植すれば、バクテリアの化学機構は移植された遺伝子の指示に従いヒトの細胞で作られるのと同じ蛋白質を作り出す。化学物質や放射線によってDNAの中のたった一つの原子が変異することでさえ、産生される蛋白質を変異させることがある。そのようなDNAセグメントの変異が、大きな変化を引き起こさないこともあるし、細胞の反応に致命的な破壊をもたらすこともあれば、正常に行われている重要な反応を変えてしまうこともある(その結果、例えば複製の制御を失い癌化する)

[5-18]

生物を構成する全ての細胞は一つの受精卵の子孫であり、同じ遺伝情報を持っている。細胞分裂による連続的な細胞の産生では、近接した環境のわずかな変化が遺伝情報の異なる部分の活性化/不活性化によってわずかに異なる発生を引き起こす。後の世代の細胞では、最終的に成熟した腺細胞、筋細胞、神経細胞と同じくらい異なった細胞にさらに変化する。

[5-19]

細胞内の無数の分子が複雑な相互作用は、例えば成長や分裂などの異なったサイクルが引き起こすだろう。細胞は外部からも制御される。細胞の振る舞いは組織のほかの部分、または他の組織から着た分子(例えばホルモンや神経伝達物質)が細胞膜に接触したり通過し細胞成分の反応速度に影響を与えることで影響を受ける。

[5-20]

生物の相互依存

生態系の中で生物は皆、直接的または間接的に他の多数の生物とつながっている。植物は食料や安全な場所、巣作りする場所をほかの生物に提供する。彼らの立場では、多くの植物が動物に繁殖を助けられ(例えば蜂は花の受粉を助ける)、ある栄養素をもらっている(動物の排泄物からのミネラルなど)。全ての動物が植物や他の動物(そして時には同種をも)含む食物の網の一部である。肉食獣と餌の関係は、肉食獣の武器―歯、嘴、爪、毒等々―と餌の防具―隠れるためのカモフラージュ、逃げるためのスピード、攻撃を避けるための盾や棘、敵を退ける刺激的な物質―の関係と同じである。ある種の生物はとても密接にほかの生物に依存している(例えばパンダやコアラはある特定の木しか食べられない)。またある種ではお互いが相手なしには生きられないように適応した(例えばスズメバチはイチジクにのみ巣を作り、イチジクの受粉を行える唯一の昆虫である)。

[5-21]

生物同士には他の関わり方もある。寄生生物は宿主となる生物から養分を得、時には宿主に悪影響を及ぼす。清掃者や分解者は死んだ動物や植物だけを食べる。そしてある生物は相互に利益のある関係を持つこともある。例えば蜂は花の蜜を花から花へ少しずつ吸うことによって、花から花へ花粉を運んでいる。また我々の小腸に住む細菌はたまたまいくつかのビタミンを作っているし、他の細菌から小腸の内壁を防御している。

[5-22]

しかし、生物同士の相互作用は受身の環境上では起こらない。生態系は生物以外の環境―陸地や水、太陽放射、降雨、無機物の濃度、温度、そしてトポグラフィーによって形作られる。世界は、真水と海水、森、砂漠、草原、ツンドラ、山などその他多くの多様性に富んだ環境によって作り出される物理的状況の多様性を持っている。これらすべての環境において、生物は他の生物によって制限される特殊な方法で自らのシェアを求めて地球の生物資源を使用する。居住可能なあらゆる環境で異なる生物が食料、空間、光、熱、水、空気、そして安全な場所を求めて争っている。生物と環境の繋がりつつ揺らぎに満ちた状態が生態系の総体を作り上げている。それゆえに、生態系の一部をよく理解するには他の部分とどのように相互作用しているのかの知識が要求されるのである。

[5-23]

生態系の中での生物同士の相互依存は、しばしば数百年から数千年わたる近似的な安定をもたらす。一つの種が増殖するとき、食糧や営巣する場所の減少、肉食獣による捕食の増加、寄生生物の侵入など、一つまたはそれ以上の環境要因による介入を受け制御される。もし洪水や火事のような自然災害が起これば、傷ついた生態系は最終的に本来と似たようなシステムにまで回復するだろう。

[5-24]

多くの複雑なシステムのように、生態系も平衡状態を中心に周期的な揺らぎを見せる傾向がある。しかし、生態系は結局のところ気候の変動が起こったときや、新たな種が移住や進化(人間によって計画的にだったり不慮にだったりもする)によって現れたとき必然的に変化する。

[5-25]

物質とエネルギーの流れ

どんなに生物の働きが複雑であっても、生物は同じ物理的保存則と物質とエネルギーの転換を他の全ての自然のシステムと共有する。長いスパンでは、物質とエネルギーは生物間と、生物と物理的環境との間で変換される。この巨大なサイクルの中では、物質とエネルギーの総量は常に形と位置を変化させつつも一定に維持される。

[5-26]

ほぼ全ての地球上の生命は窮極的には太陽から得られるエネルギーを変換することで維持されている。植物が太陽エネルギーを捕捉し、それを利用してエネルギーが豊富な分子(主に糖)を二酸化炭素と水から合成する。これらの合成された分子は直接または間接的に植物自身や、最終的には動物や分解生物(細菌や真菌など)のエネルギー源として利用されている。 植物が供給するエネルギーや植物分子の分解物を消費する生物は、それを利用して自身を構築し、そして彼ら自身も他の生物に消費される。これが食物網である。食物網のどの部分においても、エネルギーの一部は新たな合成物として貯蓄され、一部は細胞内の化学反応の過程におけるエネルギー放出の結果により産生される熱として環境中に放出される。類似のエネルギーサイクルは海においても小さな植物のような生物が太陽エネルギーを捕捉することで始まる。食物網のそれぞれの連続的なステージでは、餌とした生物の持つエネルギーのごく一部のみを得る。

[5-27]

生物の分子を構成する要素は絶えずリサイクルされ続けている。これらの主要な要素は炭素、酸素、水素、窒素、硫黄、リン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、そして鉄である。大部分がエネルギー豊富な分子から生じるこれらとその他の要素は、食物網を通り、最終的に分解者によって植物が利用できる無機の栄養分まで戻されることでリサイクルされる。局地的に過剰になったり不足したりすることはしばしば起るが、地球全体では新たな生物の合成と大体同じ速度で生物の死と腐食が起こっている。すなわち、生物質量(バイオマス)の総量は大まかに一定であり、物質が古い生物から新しい生物へ流れるサイクルが存在し、そして太陽光から得られたエネルギーが熱として散逸するという逆転できない流れが存在する。

[5-28]

数百年前に、陸上植物と海洋生物の増殖が分解生物のリサイクル能力を上回るという重要な阻害が、通常のエネルギーの流れに対して明らかに起こった。エネルギー豊富な物質の層が蓄積し、地球を覆う圧力によって徐々に石炭と石油に姿を変えた。これらの分子構造に蓄積されたエネルギーは我々が今燃焼させて放出している。そして、地球から回収される化石燃料などから得られる膨大なエネルギーに現代文明は依存している。化石燃料を燃焼させることで、我々は最終的に蓄積されたエネルギーのほとんどを熱として環境中に戻すだろう。また、我々は数百万年かけてゆっくりと取り除かれていった大量の二酸化炭素を、相対的にあまりにも短い時間で大気中に戻している。

[5-29]

どの環境でも維持可能な生物の量は最も基本的なリソース、流入するエネルギーと無機質、そして水の量によって制限される。生態系の生産力の維持は、(木や藻類などによって)合成される新しい物質と、また古い残骸(枯葉や人間による汚水など)の完全なリサイクルからなる十分なエネルギーを要求する。人間の技術が侵入したとき、物質はリサイクルできない廃棄物として蓄積するかもしれない。リソースの流入が十分でなくなったとき、土壌の浸出、砂漠化、そして無機質の貯蔵の枯渇が加速される。

[5-30]

生命の進化

現在の地球上の生命は、ほとんど40億年前のもっとも単純な一細胞の生物までさかのぼる共通の祖先から進化してきた。最近の進化の考えは地球上の生命に関する3つの主要な観察可能な事実に科学的な説明をあたえている。その3つの事実とは、膨大な数の異なった形態の生命が我々の周囲に見いだされること、その多様性の中にみられる、解剖学的、分子化学的な体系的類似性、10億年以上の年月をかけて形成された連続した岩の相から発見された化石の一連の変化である。

[5-31]

化石による記録が始まって以来、多くの新しい生命体があらわれ、ほとんどの古い生命体が消えていった。岩の相の年代から推測される多くの、追跡可能な一連の変化しつつある解剖学的形態から、科学者は次のことを確信している。それは、ある世代と次の世代との差異の積み重ねが、徐々に、バクテリアがぞうと異なるのと同じ程度に、ある生物種を他の種とは異なる種へと導いたということである。分子生物学的な証拠は、化石による解剖学的な証拠をより強固なものにし、さらに、別の種から分岐していった様々な系統の祖先の順序に関する詳細な情報をも提供している。

[5-32]

地球上にいる生命の歴史の詳細はいまだ地質学的・解剖学的・文政生物学的証拠の総合を寄せ集めたものであるが、その歴史の主な特徴は広く合意が得られている。生命の歴史の最初期は、単純な分子が、やがて自己複製可能な細胞を形成することになる複雑な物質を作り上げていったと考えられている。地球上の生命は30億年前から存在している。生命誕生に先立ち、単純な分子は、やがて自己複製可能な細胞を形成することになる複雑な有機物質を作り上げていったと考えられている。生命の歴史の最初の20億年間、微生物のみが存在していた。微生物の中には、今日存在するバクテリアや藻類と明白によく似ているものも存在していた。10億年程度前の核を備えた細胞の発達により、ますます複雑な多細胞生物の進化速度が大幅に上昇した。新たな種の進化速度は、これ以降一様ではないが、これはおそらく物理環境の変化速度を反映していると考えられている。

[5-33]

進化論の主要な概念は自然選択であり、これは以下三つの揺るぎがたい観察から生じたものである。それは、すべての生物種には、遺伝する形質のなかに変異が見られること、それらの形質のあるものは、成熟や繁殖に関して、他個体に対する優位性をもたらすものがあること、そして、優位なな個体は、より多くの子孫を残す可能性があり、子孫もまた生存・繁殖力が他個体よりも高い傾向にある、という三つである。起こりそうな結果としては、数世代経ることで、優位性をもたらす形質を持つ個体の割合が増加する傾向にあるだろうことが挙げられる。

[5-34]

選択可能な特徴にはホルモンや消化酵素の分子構造といった生化学の詳細や骨のサイズや柔毛のの長さといった最終的には生物の発達によって作り上げられる解剖学的な特徴が含まれる。選択可能な特徴はまた、視覚の鋭さや心臓の拍動の効率といった解剖学的に決定されるささいな特徴を含んでいる。生化学的・解剖学的方法により、選択可能な形質は、ある形状に網を張ったり、配偶相手のなかのある形質を好んだり、子の養育を行うといった行動にもまた影響を与える。

[5-35]

新たな遺伝する特徴は、両親の遺伝子の新たな組み合わせや、遺伝子の突然変異によって生じる。生物の性細胞の中のDNAに対する突然変異をのぞいて、生物の生涯を通じた経験により生じる特徴は生物学的にいって、次の世代に伝えられることはありえない。それゆえ、ある構造や機能を使ったとか使わなかったなどということや環境の変異から生じた個体の変異は、自然選択によって広まることはない。

[5-36]

まさにその性質上、自然選択はある特定の環境での生存にうまく適合するような特徴をもつよう生物を導くだろう。しかし、特に個体数が少ない場合に、ただ偶然が、生存競争や繁殖上の利点や欠点をもたない遺伝する特徴を広めることがある。さらに、環境が変わったとき(ここでは、他の生物もまた環境の一部である)ある形質の利点や欠点もまた変化する。従って、自然選択は一定方向への長い期間での進歩をかならずしもうみだすものではない。進化は、すでに存在する生物の中に生じるので、すでに多様な変異が存在していれば、より多様な生物が生じるはずである。

[5-37]

変化する環境の中での新しい特徴に対する何百年も繰り返される連続した自然選択は、続々と多様な新種を作り出した。進化は、ヒトがもっとも進んだ種として最終的に最上位に現れたというような、下位の形態がより上位の形態にすべて置き換わっていくはしごではない。むしろ、進化とは藪のようなものである。つまり、ずいぶん前に多く枝分かれが生じ、その枝のいくらかは死に絶え、いくらかは表面上ほとんど、あるいはまったく変化しないまま生き残り、そしてまたあるものは枝分かれを繰り返し、時により複雑な生物をもたらすのである。

[5-38]

最新の進化の概念は地球上の生命、すべての生物間の関係、そして物理環境に対する依存を理解するための統一した原理を提供する。進化がいかに作用するかということに関する詳細はまだまだ不明瞭ではあるが、進化という概念は、ほとんどの生物学的な知識を一貫した全体像にまとめ上げるための枠組みを提供する非常によく確立された概念である。

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/88906995
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。