2008年03月09日

第6章: 人体

この章の翻訳を担当したのは、sivadさん、Belgian-beerさんです。

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第6章: 人体

人間性

人体の発達

人体の基本機能

学習

身体の健康

メンタルヘルス


第6章: 人体

[6-1]

私たち人間は、多くの点で他の生物種と似たところも持ちつつも、言語と思考を操る点において地球上で唯一の存在だといっていい。大きく複雑に進化した脳を持つことで、人類は思考し、想像し、創出し、他のあらゆる生物をもはるかに越えた経験から学ぶことが出来る。私たちはこの能力を使い、巨大なスケールでテクノロジーや芸術作品を生み出してきたし、また自分自身と世界についての科学的理解を発展させてきた。

私たちは自分自身について深い好奇心を持つ点でも唯一の存在だ。私たちの肉体はどのようにまとめ上げられ、形作られるのか? 他の動物や過去の祖先たちとどのような生物学的つながりを持っているのか? 個人としての人間はどのようにあるのか? 健康でいるにはどうすればよいのか? 膨大な科学的探究がこれらの問いに注がれている。

[6-2]

この章では、科学を学ぶ人々が生物としての自分自身について知っておいて欲しいことについて述べる。このような知識は、自分自身と、社会についての知見を増進する基礎となるだろう。この章では人体の大きく6つの面に着目する。:人類の履歴、人体の発達、基本的な生理機能、学習、健康維持、メンタルヘルス、だ。身体と精神の健康に関しての項は、それらが人体の科学的理解と、あらゆる人々の大きな関心事である個人の快適な生活とを結びつけるのに役立つとの観点からここに加えられた。 TOP

 

[6-3]

人間性

ほとんどの生物学的観点から、人間は他の生命体と似通っている。たとえば、人間はそれ以外の動物同様、多数の細胞から成り立っており、化学的組成はほぼ同じであるばかりか、器官系を持ち身体機能も似通っている。生殖の仕組み、遺伝情報も共通であり、食物連鎖の一部でもある。

[6-4]

化石や分子的検証によると、他の種同様、人類は他の有機体から進化したことが示唆されている。いまだに様々な証拠が集まり続け、研究者は人類の由来に関する年代や系統に関する議論を継続しているが、ストーリーのおおまかな外郭は広く一般に受け入れられている。すなわち、ヒト、サル、チンパンジーなどの霊長類は一億年前に他の哺乳動物から進化し始めたのだ。そして、いくつかのヒトに似た霊長類は500万年前に出現し、別々に進化し始めたが、近代の人類になる種が生き残りそれ以外は絶滅したのだ。

[6-5]

他の複雑な有機生命体と同じように、人々は身長や体形、皮膚の色、体の釣り合い、髪、顔立ち、筋力、利き腕等で異なるが、それらの違いは体内の相同性と比較すると小さなものである。実際、世界中の人々はお互いに生殖し、輸血し、そして臓器移植さえも可能なのである。人類は一つの種なのである。さらに、複雑な言語、技術そして芸術など人々の文化的違いはあるものの、それらは人類と他の種との違いでもある。

[6-6]

いくつかの種は天敵から防御、食料採集や生殖などといった特殊化した機能を獲得することで社会性を身に付けるが、それらは比較的に固定したパターンであり、遺伝により規定されている。人類はカードゲームからコーラスの歌唱にいたるまで、もしくは多言語を話すことや法律を作るにように、ずっと広範囲の社会的行動を示す。

[6-7]

歴史上、人類にとって最も重要な出来事は数万年前の狩猟採集生活から農業への転換であり、それにより急速な人口の増加を可能にした。その初期の増加期間に、人類の社会的発明により村から大きな町を、新しい経済や政治的な仕組みを、記録保存と組織立った戦闘を形成したのだ。近代では、効率化した農業と感染症の制御により人口増加はさらに加速し、現在では50億を超える。

[6-8]

我々人類は生物的、社会的、文化的であるばかりでなく、技術的でもある。人類は他の種に比較して、スピード、敏捷性、抵抗力、スタミナ、視覚、聴覚、または極限状態における耐性などで、際立った能力を持つ訳ではない。しかし、様々なテクノロジーは物理的世界との相互作用を向上させており、ある意味で、我々の発明は生物学的弱点を埋め合わせているとも言えるのだ。記述された記録は大量の情報を共有し、編集することを可能にする。また、様々な乗り物は我々を他の生き物より速く移動させ、宇宙をも含む多くの環境を旅行させ、そして遠く離れた非好意的な場所へも行かしめるのだ。そういった道具はとても繊細な制御とともに我々に供給され、莫大な力とスピードも付与するのだ。望遠鏡、カメラ、赤外線センサー、マイクロフォンやその他の道具は我々の視覚、聴覚、触覚の機能を拡張したり感覚を増強したりする。義歯や化学的、外科的な補助は体に障害を持つ人々が効率的に生活することを可能にするのだ。 TOP

 

[6-9]

人体の発達

1人の人間は1つの卵細胞と1つ精子細胞がお互いに半分ずつの遺伝情報を持ちより、融合することで出来た1つの細胞から発達する。通常は女性の子宮は一回の月経周期につき1つの成熟した卵細胞を産生する。男性の睾丸は多数の精子細胞を作る。卵細胞の精子による受精は精子細胞が卵細胞の近くに射精されることで起こる。しかし、受精は常に起こるわけではない。なぜなら、射精は卵細胞が存在しない月経周期時にも起こりうるし、パートナーの一方が生きた性細胞を生産できないかもしれないからだ。また、避妊手段を講じることで、精子を不能化したり、精子の卵への到達を阻害したり、卵の放出を抑えたり、受精卵の着床を妨害したりする場合もある。人工的に妊娠を阻害または促進することは社会規範、道徳、信仰そして政治にまで疑問を呼び起こすのだ。

[6-10]

数時間以内に受精卵は分裂して2つの同一な細胞になる。それぞれがまたすぐに分裂を繰り返し、小さな球体を形成する。数日でこの球体は子宮にしっかりと付着し、そこで胎盤が母側の血液中の栄養分を発達中の胚胎の血液へと移行させる。妊娠の最初の三ヶ月間において、成功した子孫細胞が器官を形成する。次の三ヶ月ですべての器官と体形が発達する。そして、最後の三ヶ月でさらなる成長と発育が起こる。人間の発達のパターンは、発達に必要な時間的尺度こそ異なるものの、人間同様に背骨を持つ他の動物たちのそれと似通っている。

[6-11]

発達中の胚は自身の遺伝的欠陥、母親の貧しい健康状態もしくは不適切な制限食もしくはアルコールタバコ、薬剤などによるリスクにさらされているとも言える。未成熟誕生や粗末な健康管理等により誕生時に胎児の発育が不完全であると胎児は生存できない。誕生時やそのすぐ後に怪我をすると幼児は感染の危機にもさらされる。それゆえに、幼児死亡率は場所によって異なっており、特に衛生状態、出生前の栄養状態、そしてメディカルケアの質に依存している。生き残った幼児でさえも、出生前、出生後の状態が悪いと肉体的精神的能力が低くなる場合がある。

[6-12]

正常な子供達の精神的発達は継続的な発達の段階である種の能力が出現し始めることにより特徴付けられる。それらは最初の月の終わりにかけて高まる記憶、1才までの言語音、2才までに見られる連続した言葉、6才までの概念とカテゴリーを関連付ける能力、そして思春期までの整合と不整合を検出する能力、などを含む。それらの知的能力の発達は脳の成熟度の上昇と学習経験によるものである。特に子供が感受性の高い段階で適切な刺激が脳に入らないと、ある種のさらなる生物学的、精神的発達は難しいものとなるだろうし、もしくは、それらはもう起こりさえしないかもしれない。

[6-13]

他の種に比較して驚くほど長くかかるヒトの発達は人類の進化における脳の卓越した機能に関連している。ほとんどの種は行動のレパートリーが非常に限られており、生存できるか否かを多くの場合、遺伝的プログラムにより決定できる予想的な応答に依存している。それに対して、哺乳類、特に人類はより多くを学習して得た行動様式に依存する。故に、長く続く幼少期は脳にとって人類が知的な生活を送るための効果的な道具として発達するために十分な時間と機械を与えるのだ。これはより脳が発達した子供や大人と遊び相互作用することばかりではなく、世界の他の地域や過去の歴史からやって来る言葉や芸術を操る人と接することによってもなされる。生涯を通じて持続する学習能力は人々が思考の基礎を形成し、よりよく学ぶ方法の理解を手助けする。

[6-14]

脳の発達時期にはある程度個人差があり、それは個々の能力と経験の違いに由来する。あるステージから次のステージへの移行は困難を伴う場合があり、特に、生物学的変化が劇的であったり、社会的能力に問題があったり、周囲の期待が過大である場合は顕著である。異なる社会では発達時期や発達移行期に異なる意義付けと重要性を置いている。例えば、幼少期は法的、社会的、そして生物学的に定義されるが、その期間と意義は文化や歴史によって異なる。アメリカ合衆国では、生殖能力が成熟する思春期の開始時期は、一般的に、肉体的精神的に親となったりその他の成人としての機能を持つ上で適切とみなされる時期よりも数年早いのである。

[6-15]

身体的に成熟した大人が親になるかどうか、(もしそうだとして)何人の子を持つかは生物学的要因同様、多様な文化的、個人的な要因により決まる。技術は人々の生殖の制御に多くの選択肢を与えた。妊娠を防いだり、調べたり、または堕胎するには化学的、機械的手段が存在する。ホルモン療法と人工授精のような方法により、本来起こらない妊娠を実現することも可能なのである。しかし、そういった妊娠を阻害したり、起こり易くしたりする技術は社会習慣、倫理、信仰心そして政治にまで論争の的であり疑念を巻き起こすのだ。

[6-16]

すべての人間において老化は正常であはるが、ほとんど理解されていない出来事である。老化は個人差が大きい。一般に、筋肉と関節が柔軟性を失う傾向にあり、骨と筋肉は量的に減り、エネルギーレベルは低下する。感覚は鈍くなる。女性の老化における最も大きな出来事は、45から55才の間に起こる月経停止である。女性は性ホルモン産生の大きな変化を経験し、それにより生理周期も卵放出もなくなるのだ。

[6-17]

人間の老化の過程はモルモン系の変化ばかりでなく病気、怪我、制限食、DNA変異の出現と細胞内での蓄積、組織特に体重を支える関節などの疲弊、心理的要因、危険物質への被曝なども関連している。動脈への蓄積や喫煙による肺の危害、放射線の皮膚傷害などの損傷のゆっくりとした蓄積は著しい疾病をもたらす。老齢期の病気は時として脳機能に影響を与えることで、記憶や個性に障害を残す。それに加え、減少した身体能力や習慣化した社会的役割の喪失は精神的不安や落ち込みの原因ともなる。その一方で、多くの老人達が、長期的な障害をともなうことなく、とても仲の良い関係を築き、独立した活気のある生活を送っている。

[6-18]

人間を含め、どの種にも寿命には限界があるようである。100年以上生きる人たちもいれば、そうでない人たちもいるが、幼少期に死ぬ人も含めた平均寿命は、最低ではある集団における35才から、最高では最も工業化した国家の75才までと幅がある。平均寿命が高い理由の多くは、乳幼児死亡率が低い事ばかりでなく、民衆のためのより良い公衆衛生や食事制限、向上した老人医療などにもよる。予想寿命は社会経済域や性にもよって異なっている。アメリカ合衆国では、例えば、若い男性は致死的交通事故で、女性より男性の方がより多く心臓病で死亡する。貧困層では裕福層よりも感染症や殺人により多くの死亡者が出る。 TOP

 

[6-19]

人体の基本機能

人体は細胞による複雑なシステムからなり、そのほとんどは特殊化した能力を発揮する器官系に分類される。それらの器官系はそれぞれが担う基本的な機能、すなわち、食べ物のからエネルギーの供給、傷害からの保護、体内各器官の協調、そして、生殖などを知ることで最も良く理解できる。

[6-20]

エネルギーを持続的に供給するため、器官系は様々な機能に従事する。感覚神経と骨格筋は摂食作業に、消化器系は食べた物を利用可能な部分と消化出来なかった物に分解し、呼吸器系の肺は食べ物の酸化と産生された一酸化炭素の交換のための酸素供給を行う。泌尿器系は細胞活動に由来するその他の可溶性廃棄物の始末に、循環器系はそれら物質を産生された細胞から移動させたり、または、必要な細胞に届けたりするのだ。

[6-21]

他の生き物同様、人類は自分自身を守る方法を持っている。自己防衛は、危険を察知し、ホルモン系が心臓を刺激することで緊急の状況下で筋肉にエネルギーを供給し、そして、そこから脱出するかまたは防衛するのである。皮膚は危険性のある物質や細菌や寄生虫などの生物に対するバリアーの役割を果たす。免疫系はそれらの物質が体内に侵入した際や自己の体内で発生したがん細胞などに対して防御を行う。神経系は生存においては特に重要であり、環境の変化に対応する必要に迫られた際にそういったことを学ぶことを可能にするのだ。

[6-22]

それらの複雑なシステムを管理し協調するための内部制御が必要であり、脳と神経系それにホルモンとその分泌腺によってなされる。神経やホルモンによって伝達される電気的そして化学的シグナルが体を1つに統合し、それらの多くの交差した影響は体のすべての機能を協調したサイクルとして機能させるのだ。すなわち、神経はある分泌腺を刺激してホルモンを産生させ、ある種のホルモンは神経細胞に影響を与えるし、脳自身もホルモンを放出することで人間の行動に影響を与え、そして、ホルモンは神経細胞間のシグナルのやり取りにも関与するのだ。ある種の薬は、法律で認可されたものであれ違法なものであれ、体内で作られるホルモンや神経伝達物質の作用を真似したり阻害することで身体と脳に作用するのだ。

[6-23]

生殖により種の維持が確立する。性的衝動は生物学的欲求であるが、人間がどのようにその態度を示すかは心理的、文化的要因により決まる。 生殖には内性器や外性器同様、感覚器官とホルモンも関連する。生殖によって両親の遺伝子が混ざり合うことで遺伝的多様性が広がり、種の進化において重要な役割を担う。 TOP

 

[6-24]

学習

生物においては、生得的な行動、つまりその種のあらゆる個体が生まれつき、特別な経験無しにやってのけるような行為がたくさんある(例えば、ヒキガエルが視界のなかで動くハエを捕まえるような)。しかし、行動の生得性のいくらかは、その個体が正常な刺激と経験の元で生長することを必要とする。例えば人間においては、幼児は周りの会話を聞いて真似できる環境で育てば、特別な訓練無しに会話能力を発達させることができる。

[6-25]

その生物種の脳が複雑であればあるほど、その行動のレパートリーは融通がきくようになる。個体の行動における差異は、遺伝的素養によるものもあれば、経験から来るものもある。行動における遺伝と学習の役割については現在も科学的研究が進んでいるが、少なくとも、行動というものがそれらの単なる足し合わせでなく、複雑な相互作用の中で生まれるということは明らかになっている。明らかに唯一人間のみが持っている、世代を超えて概念や仕事を伝え、そしてまた新たなものを生み出すという能力は、様々な文化とあいまって、思考と行動に実質上無限のバリエーションをもたらしている。

[6-26]

筋肉活動に関する学習の大部分は練習を通じて行われる。ボールを投げる動作のように、特定の筋肉群を何度も同じように働かせれば、その運動のパターンは自動的になり、やがて意識的な制御を必要としなくなる。技術のレベルは最終的には個人の生得的な資質と練習の量、そして情報と報酬のフィードバックによって決まる。十分な練習を積めば、長い一連の行動もほぼ自動的に行うことが出来るようになる(例えば、車でいつもの道を運転する、など)。このような時には、視界や筋肉の動きに集中する必要はないし、同時に会話すらすることができる。ただし緊急時には、全注意力が、その異状に対処する行動へと素早く集中される。

[6-27]

学習は通常、人間が感覚器官を通じて自分の肉体やそれを取り巻く物理的、社会的環境に関する情報を受け取るところから始まる。おのおのがこれらの情報をどう知覚し、経験するかは刺激そのものだけではなく、その刺激が生じた状況や、受け手側の肉体的、心理的、社会的状況など沢山の因子に左右される。感覚は人間に世界のイメージを鏡のように正確に教えてくれるわけではなく、ある範囲の中での刺激に選択的に反応する(例えば目は電磁波のほんの少しの帯域を感じているに過ぎない)。その上、感覚は情報をフィルタリングし、意味づけしさえする。眠っている両親が赤ん坊の泣き声を聴くときのように、ある刺激に特に重要性を与えることもあれば、不快な臭いにも次第に慣れて気がつかなくなるように情報の意味を下げることもある。経験、期待、モチベーション、そして感情レベルの全てが知覚に影響を与えうる。

[6-28]

多くの学習は、関連付けによって起こるようだ。もし二つの出来事がほとんど同時に脳にインプットされれば、それらはおそらく記憶の中で結び付けられるだろうし、どちらか一つを見ればもう一つを思い出すようになるだろう。知覚と同様、行動の学習にも関連付けが重要だ。最も単純にいえば、気持ちよさを伴う行動は繰り返されるけれど、不快になる行動は繰り返されにくい、ということだ。特殊な状況下でのみ快や不快を伴う行動であれば、そういう状況になった時に増えたり減ったりする。学習の度合いは普通、それらのインプットが時間的な同期の程度や、その組み合わせが生じる頻度によって決まる。しかし、より繊細な効果もある。例えば、たった一度、ある行動に非常に深いな体験が伴ったとき、その行動はその後も永続的に避けられることになるだろう。一方、ある行動に毎回褒美を与えれば、それだけでその行動は非常に長く続けられることになる。

[6-29]

しかしながら、学習の多くはそれ程機械的ではない。人々は他の人を意図的に真似ることによって多くを学んでいる。また、学習とは単に新たな情報や行動を付け加えるというだけではない。関連は知覚や行動のみならず、記憶の中での抽象的な表現、つまり概念にも生じる。人間の思考は概念における関係、そして概念に関する概念の関係を含んでおり、感覚からのインプットが無くとも内部の思考において多くの関連付けを生み出すことができる。

[6-30]

人間の用いる概念は、新たな知覚や概念に対する解釈を変化させることで学習に影響を与える。人間は、あらかじめ持っている概念を支持する情報に反応したり求めたりする傾向があり、逆に手持ちの概念にないような情報は見過ごしたり無視したりしがちである。またもし互いに反するような情報が見過ごされなかった場合、新しい情報がそれまでの知識と同様に意味を持つように、思考の再構成が起こる。一般的に、新しい情報や新しい環境に直面すると、次々と思考の再構成が起こる。このような思考の再構成は人間が成熟する過程に不可欠なものであり、生涯を通じて起こるものである。 TOP

 

[6-31]

身体の健康

体調を維持するために、人間の肉体は多様な食物と知識とを必要とする。一人の人間が必要とする食物エネルギー(カロリー)の量は、体格、年齢、性、行動性、代謝率によって様々だ。エネルギーのみならず、身体を維持するにはそれを構成する物質を加えたり、入れ替えたりしなくてはならない。不飽和脂肪酸、鍵の役割を果たす何種類もの微量元素、そして人間の細胞では作り出せないいくつかの物質、必須アミノ酸やビタミン類だ。身体システムが正常な状態を保つには、それぞれの器官が適切に機能する必要がある。例えば筋肉は運動をもたらし、骨格は荷重に耐え、心臓は効率的に血液を送り出さなくてはならない。したがって、日常的な運動が健全な心肺機能や筋肉を維持し、骨の強度を保つために必要なのである。

[6-32]

健康維持のためには、身体機能に影響する物質に過度にさらされることを避ける必要もある。そういった物質で、個人がコントロールできる代表的なものはタバコ(肺がん、肺気腫、心臓病に関与)、ドラッグ(見当識障害や神経疾患に関与)、過度のアルコール(肝臓、脳、心臓に悪影響)である。さらに、人体に悪影響を及ぼす物質が危険なレベルで環境中に存在することもある。つまり、個人の健康は空気や土壌、水を監視し、それらを安全に保とうとする人々の集団的な努力にかかっているといってよい。

[6-33]

人間の健康には、他の生物も関わってくる。バクテリアや菌類の何種かは人体に感染し、おのおの好みの組織で増殖することがある。ウイルスは健康な細胞に進入し、より多くのウイルスを作り出す。通常、その過程でそれらの細胞を破壊していく。感染症は、動物からの寄生虫によって起こることもある。それらは腸や、血流の中や、さまざまな組織に住み着くのだ。 そういった感染源に対する人体の最初の防衛ラインは、それらをまず身体に入れないこと、また定着させないことだ。防衛のメカニズムは例えば皮膚が感染源をブロックし、涙や唾液が洗い流し、胃や膣の分泌物がそれらを殺してしまうことだ。これらの仕組みをきちんと活かすには、皮膚を清潔に保ち、適切な食事を取り、汚染された飲食物を避け、病原に不必要にさらされることを避けなくてはならない。

[6-34]

人体の第二の防衛ラインは免疫系だ。白血球は侵入者を捕食し、またそれらを攻撃する(また他の白血球を支援する)抗体を作り出す。もしある人が感染に打ち勝ったとすると、それらの抗体は記憶されており、次回にはより早く多く作り出される。何年もたった後でも、あるいはその後一生、免疫系はそのタイプの病原菌に対し迎撃準備が出来ており、その病気を抑え、防ぐことができる。風邪を何度もひくことができるのは、似たような症状を引き起こす原因が沢山あるからだ。アレルギー反応は環境内の物質、例えば花粉、動物の毛、あるいは何らかの食物に含まれるもの、に対する異常に強い免疫反応によって引き起こされる。時に人間の免疫系は機能不全を起こし、健康な細胞すら攻撃することがある。エイズのようないくつかのウイルス疾患は免疫系の極めて重要な細胞を破壊し、身体が全く侵入者やがん化した細胞に対して無防備になってしまう。

[6-35]

しかし、人間の健康を脅かすのは感染症だけではない。身体組織やシステムは、完全に内部的な理由によって不調をきたすこともある。身体システムの異常のいくつかは、遺伝子の変異によっておこることが知られている。それらは血友病のように明らかで直接的な影響を及ぼすこともあれば、血栓やうつ病など特定の病気にかかりやすい、といった結果を引き起こすこともある。それらの変異は遺伝したものかもしれないし、その人の発生の初期過程、一細胞や数細胞レベルの時に偶然起こったものかもしれない。遺伝子のペアのうち、一方が正常に機能すれば十分なので、多くの遺伝疾患はその原因遺伝子を両親双方から同時に受け継がない限りは発症しない(同様の理由から、両親自身も無症状だったかもしれない)。

[6-36]

現在の人間が生きている身体的、社会的条件はその昔人間の肉体が適応してきた環境と全く異なる、という事実は、人類の健康全般にとって重要な観点だ。工業化された国における一つの「異常」は、食事である。それはかつては主に生の植物や動物の肉だったが、現在では過剰な量の精製糖や飽和脂肪、塩分、カフェインやアルコール、ニコチン、様々な薬にとってかわっている。運動不足も、ずっと活動的だっただろう前史時代とのもう一つの違いだ。環境の汚染もあるし、混雑し、多忙で、くるくると変わる社会環境に暮らす精神的ストレスもある。一方で、新たな医療技術、効果的なヘルスケアシステム、衛生環境の改善、そして病気の原因に対する一般の理解が高まっていることで、現代の人間の身体はご先祖よりもずっと健康を保つチャンスに恵まれているといえる。 TOP

 

[6-37]

メンタルヘルス

精神的健康を保つには、心理的、生物的、生理的、社会的、そして文化的な仕組みについて考えねばならない。それは一般的に、人々が個人的に、職業的に、社会的に直面する出来事とどう折り合いを付けるか、という能力だと考えられている。

[6-38]

とはいえ、何が精神的な健康か、ということは文化によって、また時代によって変化する。ある文化においては完全に正気を失っていると捉えられるような振る舞いも、別の文化では単に風変わりとしてとられたり、神々しい霊感によるものだ、と思われることすらある。宗教的、政治的な権威に対してあくまで不同意の姿勢を示すと、精神的にやんでいると判断されるような文化もある。正常でない精神状態にどう接するのが適当か、ということも文化によりけりだ。ある文化では厳しく罰せられるような異常な考え方の兆候が、別の文化では社会関係の中で処理されたり、孤立させられたり、社会的なサポートが増したり、祈りを捧げられたり、あれこれと質問をされたり、医薬品を投与されたりする。

[6-39]

ストレスフルな環境に対する耐性は個々人で大きく異なっている。子供時代のストレスは特にやっかいで、その影響はその後の子供の経験や思考を形づくってしまうため、個人の精神的健康や社会適応に対して長く影響を与えてしまう。精神的な問題に対してどのようにうまく対処できるか、というのも個人によりけりだ。人々はしばしば、精神的不調に対してそんなことはないと否定的に反応する。そういう問題があると認識しても、助けを求めるための費用や、時間や、社会的なサポートがないかもしれない。行動の混乱が長引けば、家族や上司や専門家の強い反応を招き、いっそうのストレスを受けてしまうかもしれない。

[6-40]

精神的不調の診断と治療は、多くの人の精神生活というのは本人自身にとってさえ普段から直にアクセスするものではないがため、特に難しいものだ。例えば、誰かの名前を思い出すとき、その名前はただ私達の頭の中に出てくるように思える。意識は、その探索過程を全く認識しない。同様に、怒りや恐怖や抑鬱も、その仕組みを知ることなく経験する。精神的不調に関する理論によれば、このような感情は特に動揺した思考や、意識からブロックされた記憶から生じる。このような理論に基づく治療では、無意識下の問題の手がかりは患者の夢やちょっとしたいい間違いに現れ、患者は自由に長い間会話してその考えを表に出して取り扱えるようになれば回復するとされる。

[6-41]

かつて純粋な精神や魂の問題だと考えられていた深刻な精神的不調のいくつかは、生物学的な原因に基づいている。腫瘍や血管の破裂による脳組織の損傷は、その部位に応じて様々な行動障害を生じる。例えば、脳の損傷は言葉を意味が通るように並べたり人の言葉を理解する能力に影響を与えたり、無意味な感情的爆発を起こさせたりすることがある。高齢期にしばしば起こる精神的な衰えは、脳の疾患によっていることもある。生物学的な問題が常に精神的な不調を引き起こすわけではないが、しかしそのために他のトラブルに対して特に脆弱になることがある。

[6-42]

反対に、激しい感情が明らかな生化学的効果を持つこともある。恐怖や怒りは血中にホルモンを放出させ、身体を「闘争か逃走」の行動へ準備させる。精神的ストレスも生物学的な疾患に対する耐性に影響する。急激な、あるいは慢性的な精神的ストレスは神経、内臓、免疫系に影響することを示す研究結果がある。例えば、恐怖、怒り、抑鬱、あるいは単なる失望感でさえ、頭痛や、胃潰瘍や、感染症を悪化させることがある。このような影響は精神的ストレスへの耐性をさらに減少させ、危険な不調のサイクルにはまり込んでしまう。一方、社会的なコンタクトやサポートはこれらの症状への耐性を改善したり、影響を最小限にとどめる効果があることが分かっている。 TOP

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