2008年03月09日

第8章: 設計された世界

この章の翻訳を担当したのは、Kumicitさんです。
[8-1]〜[8-23]
忘却からの帰還: Science For All American -- Chap. 8 -- Agriculture, Materials and Manufacturing
[8-24]〜[8-34]
忘却からの帰還: Science For All American -- Chap. 8 -- Energy sources and use
[8-35]〜[8-48]
忘却からの帰還: Science For All American -- Chap. 8 -- Communication and Information Processing
[8-49]〜[8-59]
忘却からの帰還: Science For All American -- Chap. 8 -- Health Technology

第8章: 設計された世界

農業

材料と製造

エネルギー供給と利用

コミュニケーション

情報処理

医療技術


第8章:設計された世界

[8-1]

我々が生きる世界は、人間の活動によって多くの重要な方向で形づくられた。我々は、生命と環境への脅威を抑止・除去・削減し、社会のニーズを満たす技術オプションを創ってきた。我々は河川を堰き止め、森林を拓き、新材料と機械を作り、広大な地域を都市と道路で覆い、ときには無計画に多くの生物の運命を定めてきた。

[8-2]

そして、ある意味では、我々の世界の多くの部分は、我々の利益になるという観点でデザインされている。すなわち、主として我々のテクノロジーによって形作られ、制御されている。我々の将来の幸福が、テクノロジーをどのように開発し利用し制限するかに大きく依存するようなところに、我々は地球を持ってきている。逆に言うなら、それらは、我々が、どのようにテクノロジーの働き、我々が生きている社会・文化・経済システム・生態系をどのように理解しているかに、大きく依存している。

[8-3]

この章では、我々の環境と生命を形づくってきた主たる人間の活動について強調するとともに、テクノロジーのキーとなる面について推奨する事項を述べる。この章では、8つの基本的テクノロジー分野、農業・材料・製造・エネルギー供給・エネルギー利用・通信・情報処理・医療技術にフォーカスする。 TOP

農業

[8-4]

歴史を通して、人間たちの多くは、食糧と燃料を得ることに多くの時間を費やさなければならなかった。人間たちは、身の回りで見つけた動植物を食糧として利用するという、遊牧民の狩猟採集者として始まった。徐々に人間たちは、(すりつぶしたり、塩を食えたり、調理したり、発酵させたりといった)加工技術を使うことで、食糧源を拡大する方法を学んできた。そして人間たちは、道具や服や容器のようなものを作るために、動植物の通常は食用に適さない部分を利用する方法を学んできた。幾千年もの狩猟採集生活を経て、人間たちは、より効率よく食糧を手にできるように、動植物を操作する方法を開発してきた。そして、それによって、より多くの人口を維持できるようになってきた。人間たちは、ひとつの場所に作物を植え、土地を耕し、雑草を引き抜き、灌漑し、施肥して、作物の成長を促すようになった。人間たちは食糧と材料のために動物を捕え、家畜化した。さらに人間たちは、土地を耕し、荷を運ばせるなどを労働をさせるために動物を訓練するようになった。後には、人間たちはそのような動物たちを、閉じ込めて育てるようになった。

[8-5]

農業の進歩は時間とともに進み、人間たちは生物を利用するだけでなく、生物の形態を改変するようになってきた。はじめは、人間たちは動植物のどの個体を繁殖させるか選択するという方法で、繁殖を制御するだけだった。動植物の人間生活への適応性や耐性や生産性を向上させるために、自然にある多様な特徴を組み合わせることを、試みてきた。異種交配に利用できる自然に構成される収穫種の大きな多様性を維持するために、種子バンクが世界中で設立された。種子バンクの重要性は、その遺伝資源についていかなる権利を誰が持つかについての国際交渉を見れば、明らかである。

[8-6]

20世紀における現代遺伝学の成功は、放射線によって突然変異を誘導することにより、植物種の自然の多様性を増大させることにつながった。これにより、選択繁殖の幅が広がった。科学者たちは今や、直接的に生物の遺伝物質を改変する方法を学びつつある。我々が(事実上、全生物に共通である)遺伝コードの働きを学んでいくことで、遺伝子をひとつの種から別の種へと移すことが可能となってくる。どの遺伝コードシーケンスがどの機能を制御しているのかを理解することで、ある特徴をひとつの種から別の種へと移すことが可能になる。この技術は最終的には、新たな特徴のデザインへと導かれることになる。たとえば、捕食昆虫への抵抗力を持つ物質の合成をする遺伝子プログラムを植物に与えることも可能となるだろう。

[8-7]

ここ数十年間の農業生産性の改善の1つの要因は、植物と動物の害虫駆除だった。過去に米国では、そして世界のどこかでは今でも、農作物のかなりの部分が、雑草や齧歯動物や昆虫や病原微生物によって失われている。殺虫剤や除草剤と殺菌剤の広範囲にわたる使用により、農場の生産量は大いに増加した。しかし、問題もある。そのひとつに、農薬が環境にある他の生物に有害に作用するかもしれないことである。時には、農薬が使用された場所から遠く離れた場所に影響するかもしれない。そして、水の流れや食物網によって、時には非常に高濃度に濃縮されることがある。たとえば、メキシコワタミゾウムシ対策に用いられた殺虫剤は、その野生の捕食者を滅ぼした。その結果、ゾウムシ問題をより悪化させてしまった。もう一つの問題は生物が農薬に対する抵抗力を遺伝的に高めて、農薬の効果を減殺するかもしれないということである。それにより、新たな農薬の開発と、使用量の増大を必要とするようになる。

[8-8]

従って、より環境と調和したテクノロジーの利用が探求されている。この探求には、化学製品の慎重なデザインと利用、作物の多様性の知識と、特定の土地に植える作物を、土壌のある種の成分を減少させる作物から、その成分を補充する作物へと変えることなどが含まれる。作物の変更は、特定の作物の病気が定着する可能性を減らす効果もある。化学物質による害虫駆除に代わる方法として、他の生態系の生物を、農業生態系における害虫の数を減少させる手段として(たとえば、国内の雑草を捕食する外国の昆虫)の導入がある。このアプローチには、持ち込まれた生物が害虫そのものになってしまうという危険性が伴う。

[8-9]

農業生産性は、機械と肥料を用いることにより増大した。機械および原動力としての化石燃料エンジンにより、一人で、より多くの土地を耕作・収穫できるようになり、より違った種類の土地を耕作できるようになり、非常に多くの数の動植物を飼育し、その部分と製品を利用できるようになった。世界の多くの地域で使われる肥料の代わりに、不十分な土栄養分を補うために化学肥料が西半球で広く使われている。機械と肥料の濫用の危険性のひとつは、濫用から土を不毛にしてしまいかねないことである。このため、米国政府は農業事業者に対して、定期的に休耕して、土壌の自然な豊かさを回復させる処置をとることを奨励している。

[8-10]

幾世紀にわたり、食糧の大半は、生育場所から数十マイル以内の場所で、消費あるいは市場に出された。テクノロジーは輸送と通信によって、農業市場に革命をもたらした。土地生産性の多くの改善は、地域によっては、地元の住民のために必要とされるよりはるかに多くの食糧生産につながった。高速かつ安価な輸送機関の発展と処理・添加物・冷凍・包装などにより、食糧の損傷が削減された。しかし、農業製品の迅速かつ長距離の配布には、販売と配送のための高速かつ長距離の通信が必要である。これとともに、現代の輸送機関と通信システムは生産地から数千マイルも彼方で市場に出されて消費されることを可能としている。

[8-11]

大半の市場が地域にあったとき、悪天候は農民と消費者の幸福を大きく浮き沈みさせるうものだった。今や、食糧は世界市場で売捌かれるので、豊かな国の消費者は食料供給不足を心配することがほとんどない。一方、世界のどこかの悪天候が、世界全体の市場に影響を及ぼしうるようになっている。国内消費分の食糧供給維持および収入の乱高下から農民を保護することについての政府の懸念は、土地利用や販売商品や価格についての多くの農業規制へとつながっている。

[8-12]

わずか1世紀前、米国の大多数の労働者は、農業に従事していた。現在、テクノロジーが農業の効率を大きく上昇させたため、人口の小さい割合(わずか約2%)だけが生産に直接関与している。しかし、農業機器と化学製品の生産や、食糧と繊維の加工・貯蔵・輸送および配布に、より多くの人々が関与している。米国の食糧生産に必要な農民の数の急速な減少は、地方社会の人口構成を大きく変化させ、かつて支配的だった生活様式を事実上消滅させた。 TOP

 

[8-13]

材料と製造

材料

テクノロジーは多種の材料の利用と応用に基礎を置いている。それらの材料は天然材料や、混合物あるいは加工物、あるいは基礎物質からの合成である。すべての材料は、強度・密度・硬度・柔軟性・耐久性・耐水性・耐火性・熱伝導性・電気伝導度などの物理特性を持っている。これらの特性により、そのテクノロジーにかかわるメーカーやエンジニアやその他はどの物質を使うか決定する。

[8-14]

人間の歴史の大半では、材料テクノロジーは主として動植物性製品や鉱物のような天然材料の使用を基礎としてきた。時とともに、人間たちは、皮革をなめしたり、粘土を焼いたりすることで、天然材料の特徴が加工によって変化することを知るようになった。そして、人間たちは、混合したり、積層させたり、接着したりして材料を物理的に組み合わせることで、複数の異なる材料の特性を組み合わせることができることを発見した。たとえば、弓に異なる種類の木材を積層させたり、コンクリートに鉄筋を入れたり、鋼を亜鉛メッキしたり、服の布地に繊維を織り込んだりする。人間たちは鋼の焼き戻しやガラスの焼きなましのような微妙な制御により、その特性を大きく向上できることを学んだ。

[8-15]

1960年代から、材料テクノロジーは、まったく新しい特性を持つ材料の合成にフォーカスするようになっている。このプロセスは通常、幾千年も前から行われてきた合金のように、材料を混合することが必要である。典型的には化学変化が起きて、新材料の特性は、それを構成する材料とはまったく異なるかもしれない。プラスティックのような新材料は、原子の長鎖を結合させる化学反応よって合成される。プラスティックは、自動車や宇宙探査機の部品から、食品包装や繊維、人工関節のジョイントや縫合部など広範囲な用途にあわせた特性を持つようにデザインできる。陶器は、また様々な特性を持つように作れる。たとえば、非常に低い電気伝導度のセラミック絶縁体から、電気伝導度を制御可能なセラミック半導体、そして事実上の無限の電気伝導度を持つ超伝導体まで。全天候モーターオイルや調光サングラスのように、さまざまな環境に合わせて変化する材料までデザインできる。

[8-16]

テクノロジーの成長によって、我々は、環境から材料を自然が補充できるよりも、ずっと速く使ってしまうようになった。多くの国の森林は過去数百年で大きく減少してしまい、鉱物資源は減少している。代替材料の探究が続けられていて、多くの場合は代替材料が見つかるか、発明される。

[8-17]

ますます、使用済み材料の処分が問題になってきた。有機廃棄物のような使用済み材料は安全に環境にもどすことができるが、人口の増大に伴って、それは次第に困難かつ高価になってきている。しかし、プラスティックのような材料だと容易にはリサイクルできないし、すぐには分解されず、環境にはもどらない。一例に過ぎないが劇的な例として放射性廃棄物など、長期間にわたる汚染物質は最善の処理方法が明らかではなく、広範囲の論争対象となっている。これらの廃棄物問題の解決には、社会革新と技術革新を含む組織的努力を必要とする。

[8-18]

製造

ものを作るには、多種の道具を必要とする。テクノロジーの発展には一般的に、切断道具の繊細さと鋭利さ、使える力の大きさ、集中可能な熱の温度、動作の高速さ、同一動作をどこまで正確に繰り返せるかといった点の発展が大いに寄与する。そのような道具は現代の製造業における、自動車や腕時計のように大量の均一な品質の製品および、宇宙船や原子時計のように少数の徹底的に高品質の製品を製造する必要性に主として基づいている。

[8-19]

現代の製造プロセスは、普通は3つの大きな段階から構成されている:(1) 原材料の確保と準備 (2) 形成や結合や組み立てなどの機械プロセス(3) コーティングや検査や包装などである。これらすべての段階で、タスクの順序性や実行方法について選択の余地がある。したがって、タスクを実施する機関は生産性を最適化することが、製造業のもうひとつの主たる構成要素となっている。

[8-20]

現代の工場は特定製品の製造に特化していることが多い。同じ場所で連続的に、ほぼ同じ製品を大量生産する方が、ばらばらに製造するるよりも、はるかに安価に製造できる。そのような費用節減効果は、機械やエネルギー供給や原材料あるいは構成部品を労働者とともに集約することで、実現する。製品の保守と修理は集中生産されている方が容易である。というのは、ユニット間あるいは別モデルの間でも部品が互換にできるからである。

[8-21]

製造過程は、ますます自動化される。大量生産の反復作業にロボットを使う場合もある。製造工程を制御する指示は、人間によって解釈・実行されるのではなく、電子的に行われる。制御の柔軟性は、生産ラインのカスタマイズを可能とる多機能機械のデザインおよび利用を可能とする。そのような多機能機械だと、新規に機械を導入しなくても、新たな製品ラインを導入できるかもしれない。

[8-22]

製造工程をデザインすることは、自動化するかどうかに関係なく、非常に複雑なものになりかねない。まず、運転手順には多くの選択肢があるので、非常に高効率でコスト効果の高いものを選択しなければならない。そして、いかなる手順を選択したとしても、大量の原材料の流れと運転タイミングを制御し、監視し、調整しなければならない。人間のスキルと判断では多くの微妙なところは、正確に指示するのは困難かもしれない。エキスパートたちは自らが何をどのように実行しているか、説明できるとは限らない。コンピュータ制御は、高度に複雑な製造工程の効率的な運転を可能とするが、それでもなお、予見していない事態や予見不可能な事態に対処するために人間による監督を必要とする。

[8-23]

製造工程の進化は、人間の仕事の性質を変えた。かつて、製品や技術はそれほど変わらず、職人たちは同じ作業を生涯続けられた。ひとつの場所での大規模生産は極端な専門化をもたらした:各々の労働者は、完成品をつくりあげるのではなく、ひとつの同じ単純な作業を繰り返すことになった。自動化の進展によって、直接作業員や熟練した職人をあまり必要としなくなり、かわって多くの技術者やコンピュータプログラマや品質保証や監督者や保守要員を必要とするようになった。それにより、果てしなく続く同じマイナーな作業の反復による退屈さ、そして重要でない作業をしているのだという感覚を労働者は感じなくて済むようになったかもしれない。しかし、自動化はまた、労働者による制御作業も削減し、一方で仕事を生み出しながら、他方で人間の仕事を奪うことになるかもしれない。技術的変化のペースが速くなり、柔軟性と新しいスキルを学ぶ技術はますます重要になってきた。 TOP

 

[8-24]

エネルギー供給と利用

エネルギー供給

工業・輸送・都市開発・農業など大半の人間の活動は、利用可能なエネルギーの量と種類に拘束されている。エネルギーは、分解・結合・輸送・通信・原材料調達・加工・リサイクルのようなテクノロジープロセスに必要である。

[8-25]

エネルギー供給源や利用方法の違いにより、費用・影響・リスクが異なる。太陽光や風力や水力のようなエネルギー供給源だと、無限に利用継続可能である。木や草のような植物燃料は自己補充できるが、その補充率は限定されており、それ以上に収穫しないことが条件となる。石炭・石油・天然ガス・ウランのように地球によって濃縮済みの燃料は、採掘が容易なところが尽きると、次第に採掘が困難になっていく。資源が不足しそうになると、新たなテクノロジーでより深く採掘するか、より低い濃縮度の鉱石を利用するか、海底を採掘することで、うまく残された資源を利用できるようになるかもしれない。いつ資源が完全に枯渇するかを予測することは困難である。最終的な限界は、完全な資源の消滅ではなく、負担不可能な費用によって決まるかもしれない。すなわち、エネルギー供給源の採掘に要するエネルギーが、採掘量を上回るときである。

[8-26]

太陽光は我々が利用するエネルギーの大半の最終的な源である。太陽光は幾つかの形で利用可能となる。太陽光エネルギーは直接的に植物に獲得される。また、大気・陸地・水を暖めて、風を起こし、雨を降らせる。しかし、エネルギー流量が非常に弱いので、テクノロジーで利用するために、エネルギーを集約する巨大なシステムが必要となる。水力発電は広大な陸地から河川に流れ込んだ雨水を使う。風車は広大な陸地と海面が暖められてできる風の流れを使う。風力発電と太陽光発電は巨大な集積システムを必要とする。家庭の需要をまかなう小規模なエネルギー供給システムは、風車および太陽熱の利用という形で実現可能である。しかし、風力および太陽熱の経済効率の高い大規模利用テクノロジーは開発されていない。

[8-27]

歴史の大半では、薪を燃やすことが、調理や住居の暖房や機械を動かすための最も普通のエネルギー供給源だった。今日に利用されるエネルギーの大半は、数百万年以上の時をかけて植物が集積した太陽エネルギーを貯蔵した、化石燃料を燃やすことによって得られている。しかし、前世紀には石油および派生物である天然ガスが好まれるようになった。というのは、容易に採掘できて、工業で多用途に利用でき、自動車やトラックや鉄道や航空機のような乗り物の携帯型エネルギー供給源として集積が容易だからである。残念ながら、あらゆる化石燃料の燃焼は、健康と生命を脅かしかねない気体廃棄物を大量の放出する。地下の石炭採掘は炭鉱労働者の健康と安全にとって非常に危険であり、また地球に傷痕を残しかねない。石油の流出は海洋生物に脅威となりうる。樹木を燃やすという方法に立ち返るとしても、それは満足できる代替案ではない。というのは、いわゆる温室効果ガスを大気中に放出するからである。また燃料のために樹木を切り倒しすぎれば、局所的および全地球的な生態系を健全な維持に必要な森林を減少させてしまう。

[8-28]

しかし、他のエネルギー供給源がある。使用した材料の質量で、化石燃料の燃焼よりも、はるかに巨大な量のエネルギーを出す、重元素の核分裂がそのひとつである。原子炉では生成されたエネルギーの大半が水を熱して蒸気にして、発電機を回すのに使われる。必要となるウランの供給量は、最終的には限界があるにせよ、多くある。しかし、核分裂生成物は放射性が高く、幾千年も残留する。一般人の放射能への恐怖と原子力発電所の破壊活動および核兵器をつくるための核物質窃盗へ不安により、これらの核分裂生成物を合理的に安全に処理するテクノロジーの問題は増大する。制御された核融合反応は潜在的には非常に大きなエネルギー供給源だが、まだテクノロジーが実用になるとは証明されていない。核融合反応には、それ自体は安全な燃料材を使用する。しかし、その過程での使用済み建設資材は放射性を持っており、その処理の問題は残る。そして、新たなテクノロジーにつきものの、予期しないリスクがあるかもしれない。

[8-29]

Energy Use

エネルギーは利用される場所へ配送されなければならない。人間の歴史の大半においては、エネルギーは風車や水車のように、その場で使われたり、森林のすぐ近くで使われたりした。時とともに運輸の発展により、化石燃料を採掘された場所から遠く離れた場所で燃やせるようになり、集約製造は広くどこでも可能になった。20世紀にはエネルギー供給源を発電のために使うことが一般的になった。電気はエネルギーをほぼ瞬間的に送電線を伝わって、エネルギー供給源から遥か彼方へと輸送できる。さらに電力は他のエネルギーに形を変えたり、他のエネルギーからもどしたり便利にできる。

[8-30]

利用可能なエネルギー量とともに、その質もまた重要である。すなわち、どこまで集中できるかと、どこまで便利に使えるかである。テクノロジーの変化の中心的要因は、炎の温度を上げる方法だった。新たな燃料の発見と、釜戸や炉のデザインの向上と、空気あるいは純酸素の吹き込みが、次第に、粘土やガラスを焼いたり、鉱石を溶解したり、金属を精錬したりする炎の温度を高めてきた。レーザーは強度を大きく強め、微細な制御を可能とする、放射エネルギーを集中させる新たな道具である。これはコンピュータチップの製造や眼科手術から通信衛星まで、幅広い用途のために発展している。

[8-31]

エネルギーの形態を転換するどんな方法であっても、エネルギーの環境への散逸はわずかながら不可避である。製造された物に結びつけられたエネルギーを除き、我々が使うエネルギーの大半は最終的には散逸し、すこし環境を暖め、最終的には宇宙空間に放出される。これは、実質的な意味では、たとえ身の回りに残っているとしても、エネルギーは使い果たされたと言える。

[8-32]

人間たちは意図的に自分たちに有用な形にエネルギーを転換する巧妙な方法を発明してきた。それらには単に石を投げること(生化学エネルギーを運動に)から、火をつける(化学エネルギーを熱と光に)、蒸気機関のような複雑な仕掛けを使う(熱エネルギーを運動に)、発電機(運動を電力に)、核分裂炉(核エネルギーを熱に)、そして太陽電池(放射エネルギーを電力に)まである。これらのエネルギー転換機器の運転において、使用可能な出力エネルギーすなわち、さらに転換可能な形のエネルギーは、常に入力エネルギーよりも少ない。その差分は熱の形で放出される。そのような機器デザインの到達点は、可能な限り効率を高めること、すなわち与えられた入力に対して、出力を最大化することである。

[8-33]

富と成長の世界的な分布の偏りに一致して、エネルギーは世界の地域間で偏って使われる。先進工業国は工場での化学プロセスと機械プロセスで相当量のエネルギーを使って、合成材料を製造し、農業用肥料を生産し、公共および個人の輸送機関や、ビルの冷暖房や照明や通信の原動力となる。世界人口が増加し、より多くの国が工業化することにより、エネルギー需要の増加率はさらに大きくなりそうである。大規模なエネルギー利用には、大規模な無駄(たとえば、燃費の悪い自動車や断熱が不十分なビルなど)が伴う。しかし、他の要素、特にエネルギー利用効率の上昇は、成長に伴うエネルギー需要の増大を抑制できる。

[8-34]

エネルギー供給源の枯渇はテクノロジーおよび社会的手段で先送りできる。テクノロジー手段には、エネルギー転換効率の優れたデザインや、魔法瓶のような断熱や、漏れた熱で何かをすることなどによって入力エネルギーの利用効率を最大化することがある。社会的手段には、政府による、優先度の低いエネルギー利用の制限や、自動車エンジンのような効率あるいは家屋建設における断熱性に対する規制の確立などがある。原則の問題あるいは長期的な個人の支出の削減のために、照明を消したり、経済効率の高い自動車を使ったりするなど、個人も自らの選択とテクノロジーの利用を考慮して、エネルギー効率を上げられるかもしれない。そこには、いつものようにトレードオフの関係がある。たとえば、効率よく断熱された家屋は冬暖かく夏涼しいが、換気を制限しているために汚染物質の屋内蓄積を増加させるかもしれない。 TOP

 

[8-35]

コミュニケーション

いつもうまくいくわけではないが、人々はしょっちゅうコミュニケーションをとる。人々の必要性に応じて、幾百の異なる言語が進化した。これらの言語の発音や構造や語彙は大きく異なっており、言語は文化に拘束されているので、正確にひとつの言語から別の言語に翻訳するのは、容易というわけではない。個人の手紙から本まで、そしてジャンクメールなど、文字に記されたコミュニケーションは、大陸を縦横に動き、最辺境にも届く。電話やラジオやテレビや衛星や録音・録画や、その他の電子コミュニケーションは、選択の幅を広げ、情報の流れを増加させた。

[8-36]

コミュニケーションは、情報を表現する手段・それを送受信する手段・送受信の正確さについての何らかの保証などを必要とする。情報の表現は、伝達媒体への情報のコーディングを必要とする。人間の歴史において、天然媒体は、物理的な接触(感触)・化学(嗅覚)・音波(発声と聴覚)・可視光(視覚)であった。しかし、信頼性と永続性を実現するには、情報を記録する媒体が必要となる。最初に発達した信頼性のある媒体は、木材や粘土や石、そして最後は紙という固体だった。今日でも我々は、プラスティックのディスクや磁気テープにミクロ的にマークをつけている。これらの修正された媒体は長持ちできて、コード化された情報を無傷で長い距離を運べる。

[8-37]

電流を発生・制御するデバイスの発明により、情報を電流の変化としてコード化できるようになり、電線を伝って、ほぼ瞬間的に長距離に情報を伝達できるようになった。電波の発見で、同じ情報は波パターンの変化としてコード化できるようになり、有線でつながなくても、大気中を全方向に配信できるようになった。特に、弱い電気信号で、はるかに強い電流を制御し、同じパターンの情報を印加することができる、電子アンプの発明は重要である。近年では、レーザー光の効果的な制御により、光ファイバー上のパルスとしてコード化された情報が送れるようになった。

[8-38]

情報はアナログやデジタル形式でコード化できる。たとえば、もともと有線通信も無線通信も、文字および数字を示す人為的コード化を必要とする、オンとオフのバーストというデジタル形式だった。音声信号および光信号を電気信号に変換し、逆に電気信号を音声信号および光信号に変換するデバイスであるエレクトロニクスの発明によって、コミュニケーションは大きく発展した。エレクトロニクスは、音や光の微妙な変化を記述するアナログ信号を伝送し、それらの信号を媒体上の連続変化として記録することを可能とした。ミクロに情報を転写し、超高速に情報を伝達する能力は、アナログ信号をオン・オフのデジタル信号に復調することで、歪とノイズを削減できる。今では、あらゆる種類のアナログ信号は、サンプリングや数値として記述やその形式での格納あるいは伝送やコンピュータでの処理が可能であり、おそらく音やグラフィックについてアナログ形式に復調することが可能である。

[8-39]

情報が記録・変換・転送される際に大きくなるノイズに対して、シグナルを大きく保つことは、コミュニケーションの基本的テクノロジーの挑戦である。シグナルを強化したり、ノイズを削減することで、SN比を向上できる。シグナルの増幅あるいは、波を狭い幅のビームに集束させることによるエネルギーロスの抑止によって、シグナル強度を保てる。電話線をシールドして外部ノイズ源から保護したり、アンプを冷却して内部ノイズを削減することにより、ノイズが大きくならないように制限できる。コミュニケーションにおいてノイズによるエラーを最小化する、まったく異なる方法は、比較およびエラー検出を可能とする反復もしくは何らかの冗長性の利用である。コミュニケーションにおける冗長性は常に望ましいことである。というのは冗長性がなければ、ひとつのエラーでメッセージの意味がまったく変わってしまうかもしれないからである。

[8-40]

コミュニケーションは時々セキュリティが必要である。メールは横取りしてコピーでき、電話線は張り替えられ、無線通信はモニターできる。ロックとパスワードを使ったりして信号にアクセスするのを阻止したり、暗号化して読み取れないようにすることで、プライバシーを保護可能である。解読困難な暗号の生成は、数学の数理論の興味ある応用である。しかし、セキュリティを保証するテクノロジーの発展に従って、それを突破するテクノロジーも発展している。 TOP

 

[8-41]

情報処理

テクノロジーは情報の伝送とともに、情報の収集・格納・検索において重要な役割を長きにわたって果たしてきた。文章・表データ・図・数式・ファイリングシステムの発明は、すべて操作可能な情報量を増大させ、処理する速度を向上させてきた。大量データは現代社会の活動に不可欠である。たとえば、情報の生成・処理・転送は工業化社会における労働者の最も一般的な仕事になっている。

[8-42]

記号が規則正しく格納され、整理されていると、情報は最も利用しやすくなる。大量のデータを整理するために、表やインデックスやアルファベット順のリストや階層化されたネットワークなどを用いる。最良のデータ格納方法は、そのデータの用途によって異なる。ある目的で格納された情報は、別の目的では非常に取り出しにくくなる。たとえば名前がわかっていれば名前のアルファベット順の電話帳は理想的だが、住所がわかっているときには、それは役に立たない。多目的データベースは情報を異なる方法で配置できる。たとえば、本は著者と表題と内容でリストできる。そのような情報システムの典型的な特徴は、コンピュータがマッチした項目を検索できるように、各データエントリに複数のキーワードを付与していることである。

[8-43]

数学処理や論理処理を実行する機械式装置は幾世紀にもわたって存在してきたが、情報処理に革命をもたらしたのは電子計算機の発明であった。数理論理の一面は、数字・文字・論理命題を含む情報はすべて、yes-or-noのビット文字列としてコード化できることである。たとえば、ドットとダッシュ、"1"と"0"、スイッチのオンとオフなど。電子計算機は、基本的には、論理演算を行えるように結合された非常に多くのオン・オフスイッチである。新しい材料と新しいテクノロジーは、徹底した小型化し、稼動部のない信頼性の高いスイッチを可能にした。これにより、膨大な数のスイッチを小さなスペースに実装することを可能とした。サイズが非常に小さいことは、スイッチ間の接続も非常に短距離であることを意味する。それは、信号がスイッチ間を短時間に伝達できることを意味する。従って、小型化された電子回路は、高速処理が可能となる。コンピュータは、処理ステップの実行にはわずかの時間しか要せず、膨大量のコネクションを処理できる。従って、非常に複雑な処理や数百万回の反復処理を人間が行うよりも、ずっと高速に処理できる。

[8-44]

コンピュータの動作の一部はハードワイヤードで、一部は命令コードセットで制御される。汎用コンピュータでは、情報を処理する命令はハードワイヤードではなく、他の情報と同様に一時的に格納される。このような配置にすることで、コンピュータの処理能力に柔軟性を持たせることができる。人間は、既にプログラムされたソフトウェアもしくは、プログラミング言語で記述されたオリジナルプログラムによって、コンピュータに命令する。プログラミング言語を用いることで、プログラマーは英語あるいは代数学のような記述、あるいは幾何学的図式で、操作を組み上げることが可能となる。それらの命令は、コンピュータで動作させるために、別のプログラムによって機械語に翻訳される。多くの場合、プログラムは、キーボードや情報記憶装置や自動検出装置からの入力を必要とする。コンピュータの出力はシンボル(単語や数字)であったり、グラフィック(チャートやダイアグラム)だったり、(アラームシグナルやロボットの動作など)他のマシンの自動制御だったり、人間のオペレータへの指示の要求だったりする。

[8-45]

コンピュータの重要な役割はモデル化やシミュレーションである。たとえば、経済や天候や交通信号や戦略ゲームや化学反応など。実際には、コンピュータはそのシステムがいかに働くかを模擬させた複雑な命令セットの論理的帰結を計算する。コンピュータプログラムは、それらの命令を指示し、システムの初期状態を記述するデータから開始して実行させるように書かれている。プログラムはシステムの将来の状態を計算できて、それをシステムが実際にどう振る舞うかと比較可能である。その比較により、我々のシステムの規則性についての知識がどれくらい正しいかを評価し、誤りを修正することが可能となる。我々がシステムの規則性をすべて知っていると確信できれば、我々はコンピュータの帰結演繹力を使って、システムの設計を支援できる。

[8-46]

コンピュータプログラムの重要な潜在的役割は、人間が問題解決および意思決定を行うことを支援することである。コンピュータは既に、データの蓄積・分析・要約・表示するプログラムを実行することで、人間の思考を支援する役割を果たしている。パターン検索プログラムは巨大なデータプールから、意味のあるデータの抽出するのを支援している。人間の思考を模倣し、さらにはそれを超えることを目指した、人工知能の原理に基づくプログラムのデザインが、コンピュータサイエンスの重要な研究分野となっている。しかし、人間の思考はまだ、十分には理解が進んでいない。経済や天候のような他の複雑なシステムのシミュレーションと同じく、プログラムの実行結果と現象の比較は、システムがどう働くかを学ぶためのテクニックである。

[8-47]

よくわかっている機械システムでは、コンピュータは、慎重な人間の制御と同等もしくはそれ以上に正確かつ迅速に制御できる。従って、自動車のエンジンの制御や航空機や宇宙船の管制や兵器の照準・発射などは、人間のオペレータよりも多くの情報を考慮して、より迅速に反応するようにコンピュータ化できる。とはいえ、入力される指示やデータにエラーが含まれていたり、コンピュータのハードウェアやソフトウェアに故障があったりするかもしれない。たとえ完全に信頼できるコンピュータとプログラムと情報であっても、関連するファクターがプログラムで考慮されていなかったり、ファクターの値が想定外であれば、不完全な結果しか出せないかもしれない。たとえ全システムが技術的に完璧であったとしても、複雑で高速なシステムは、その速度が人間がその出力を監視・判断する能力を超えてしまうことで、何らかの問題を起こすかもしれない。

[8-48]

今日の世界の制御の複雑さは、大量の情報のコンピュータ管理を必要とする。そして情報量の増大とともに、さらなる情報を内包した情報を、多層化された情報として、追跡・制御・解釈する必要性が高まる。この情報洪水により、より小さなスペースに、より多くの情報を格納し、より迅速に情報を取り出し、より高速に転送し、より効率的にソートおよび検索し、エラーを発見したら検査修正するようなエラーを最小化するテクノロジーの発明が必要となる。コミュニケーションについては、情報を格納することは、プライバシーおよびセキュリティ問題を伴う。コンピュータで管理された情報システムでは、情報が偶発的に改変されたり失われたりせず、不正アクセスされても有意味な情報を引き出されないことを保証する手段が必要である。 TOP

[8-49]

医療技術

医療技術は、人間が健康を脅かされる状況にならないようにし、そのような状況になっても抵抗できるようにし、抵抗できなくても悪影響を最小にすることを目指す。

[8-50]

歴史的には、人間の健康についてのテクノロジーの最重要な効果は、治療ではなく予防によるものだった。病原性生物体が昆虫や齧歯動物や人間の排泄物によって広まることがわかったことは、人間の長寿命化と生活の質の向上に大きく影響した、公衆衛生の大きな改善につながった。公衆衛生には、ごみの格納と処理、下水道と汚水処理工場の建設、水とミルクの浄化、伝染性の患者の隔離、化学的手段(殺虫剤と消毒剤)による昆虫と微生物の退治、微生物を媒介するネズミやハエや蚊の退治などがある。病気の予防において、体に必要なタンパク質やミネラルや微量元素を供給するのに必要な食品のバラエティを含んだ適切な摂食が、病気の予防において重要である。

[8-51]

医療技術は、病気に対する人体の自然な抵抗力を強化するのにも用いられる。優れた栄養状態と公衆衛生条件のもとでは、人体はどんな治療も受けなくても、多くの伝染病から回復する。そして、回復そのものによって免疫を獲得する。しかし、多くの重病の苦痛と危険は人為的に防ぐことが可能である。予防接種によって、人体の免疫系は、実際に病気になる苦痛と危険性なしに、特定の病気に対する防御手段を開発できるようになる。血液中に注入された弱められた病原体あるいは殺された病原体は、人体の免疫系を誘導して、生きた病原体が侵入しようとしたときに、その病原体を無力化する抗体をつくらせる。公衆衛生についで、予防接種は、特に幼児と子供たちの間で、病気による早死に対する最も有効な対策だった。

[8-52]

分子生物学は、現在のワクチンよりも、正確かつ安全に、多くの免疫反応を引き起こす物質を設計することを可能にし始めている。遺伝子工学は、研究と応用のために十分な量の物質を生産するために生物を誘導する方法を開発している。

[8-53]

多くの病気は細菌やウイルスに起因する。人体の免疫系が細菌感染を抑制できない場合、少なくとも抗菌剤が戦うようにデザインされた対象の細菌に対して、有効かもしれない。しかし、いかなる抗菌剤の濫用も、自然選択により、その抗菌剤の影響を受けない細菌を増殖させかねない。細菌に比べてウイルス感染症の治療法については、あまりわかっていない。細菌感染と戦う抗菌剤と同等な抗ウイルス剤はほとんどない。

[8-54]

病気の発見と診断とモニタリングは、数種類の異なるテクノロジーによって改善される。人体の一般的な状態についての知見の進歩は、体温と血圧を計測し、心音を聞く単純な機械式装置の開発とともに始まった。細長いプローブで可視光を照射したり、体外からの磁場や赤外線や音波やX線や放射線を照射するイメージングデバイスにより、体内をより良く観察できるようになった。波の挙動の数学モデルを使うことで、コンピュータはこれらのプローブからの情報を処理し、3次元イメージの動画を作成できるようになった。この他に、体液中から病気に関連した化学物質を検出し、正常範囲と比較する化学テクノロジーもある。

[8-55]

染色体の上に遺伝子の位置をマッピングする技術は、子供たちや、将来に両親となる人々の病気関連の遺伝子の検出を可能にする。両親となる人々に対しては、ありうるリスクについて告知およびカウンセリングできるようになる。人体を観察・測定するテクノロジーの発展により、医師たちはこれらすべての情報を同時かつ容易に検討できるようになるだろう。コンピュータプログラムは患者のデータを正常データおよび病気特有のパターンと比較して、診断支援できるようになってきている。

[8-56]

多くの病気に対する現代の治療法も、科学ベースのテクノロジーによって改善されている。たとえば、化学についての知識は、薬剤や天然の体内化学物質がどのように働くか、どうやればそれらを大量に合成できるのか、そして適量を人体にどうやって投与すればよいかなどについての知識を向上させてきた。ある種のガン細胞に最もダメージを与える物質が特定された。微細に制御された、イメージングに使うよりもはるかに強い可視光線・超音波・X線・放射線の生物学的影響についての知識から、メスや焼灼に代わるテクノロジーの開発につながった。人間の免疫系についての知識の進展と新材料の開発により、組織あるいは臓器全体の移植はより一般的なものになってきた。耐久性があり、免疫系に拒否されない新材料によって、今や人体の一部を交換したり、心臓ペースメーカーや体内状況をセンシングする装置や、最適時間に薬剤が調剤される装置を埋め込めるようになってきた。

[8-57]

精神障害の効果的治療には、目前の心因性徴候だけでなく、考えうる精神的原因と影響および、個人の経験全体に根ざす可能性についても注意を払う必要がある。精神治療には、長期もしくは集中的な個人面談や、同様の問題を抱える人々のグループ討議や、行動形成のための意図的な懲罰と報酬などが含まれる。医療としては薬物の使用や電気ショックや手術なども含まれるかもしれない。これらの治療法のいずれもが、その他の医療分野の治療法よりも不確かである。どのアプローチもある症例には効くかもしれないが、他の症例には効かないかもしれない。

[8-58]

医療技術の発展により、倫理的および経済的問題が起きてくる。公衆衛生と医療と農業のテクノロジーの発展が合わさった結果、人間の寿命が長くなり、人口が増大した。21世紀半ばまでには止まるとは考えにくい、人口の増大は、適切な食糧と保護と健康管理と雇用をすべての人々に提供しようとすることを困難にし、環境により負荷をかけることになる。高価な治療法は、誰がその治療を受け、誰がそのコストを負担するかについて、歓迎されざる選択を社会に強要することになる。さらに、病気および障害の診断・モニター・治療テクノロジーの発展は、自力では生きられない人々を、社会が生かし続けることを可能とした。これは誰に対して、特別な治療をどれだけの期間行うか、あるいは行わないかを誰が判断するのかという問題を提起する。妊娠中絶、高度障害児の集中治療、脳死した人々の生命機能の維持、臓器売買、人間の遺伝子の書き換え、生物学テクノロジーによって提起されるその他の多くの社会的・文化的問題について、議論が続いている。

[8-59]

予防的および予後的健康管理において、地理的・社会的・経済的集団における病気・栄養失調・死亡の分布のトラッキングのための統計の利用がますます重要になってきている。統計は、公衆衛生問題の所在とその広まる速さを特定するために有効である。予防的および予後的手段の効果を客観化し、それに従って効果的な計画をたてるために、時には数学モデルの助けを借りて、情報を解析することも可能となっている。 TOP

この記事へのコメント
[8-2]
>我々が、どのようにテクノロジーの働き、我々が生きている社会・文化・経済システム・生態系をどのように理解しているかに、大きく依存している。

冒頭の「どのように」は不要。
「我々が、テクノロジーの働きや、我々が生きている社会・文化・経済システム・生態系をどのように理解しているかに、大きく依存している。」
とするのがよいと思われます。
Posted by 黒影 at 2008年03月13日 01:12
ご指摘acceptします。

ということで修正しました。
http://transact.seesaa.net/article/88187365.html
Posted by Kumicit at 2008年03月13日 21:53
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